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ひっさびさに講師しました
2023-07-22 Sat 17:26
暑中お見舞い申し上げます。
7月はじめの横浜市南区、どんとこいみなみでの講演会も終了。猛暑の中、真剣に聴きに来てくださった皆さま、企画してくださった皆さまに感謝しかありません。コロナ禍以降、久々の講師でしたが、皆様の真摯な眼差しに支えられました。
今回の講演は、“学齢期までとそれ以降の長い人生のギャップ”を、上手く乗り越えるということについてお話しさせていただきました。
30歳を超えた自閉症+最重度知的障害の長男の母として、またちっぽけな野のすみれクリニックリハビリテーション科の院長として、大切なテーマですが、まだまだ未消化部分もありました。

障害がある”と言われる人たちを、“支援する”人たちへ
困った人たちは困っている人たちです
悶着を起こしたい人はいません。
正確に本人を知ってください。
障害に対する知識をもってください。
彼らの自由も保証してください。
風変りですが、一生懸命生きています。
お互いに社会を形作るピースとして理解しあいたいです。
そして、支援が上手くいかなくなった時には、がっかりせず、
落ち着いて、方針に工夫と変化をお願いいたします。
工夫して上手くいけば、
支援する人もぐ~~~っと幸せを感じることと思います。

↑のスライドの一枚です。医者としてより、母としての心があふれ出ちゃっていますね~~(;^_^A

この1週間、神奈川新聞でやまゆり園の事件が特集されていました。神奈川新聞さん、忘れずに特集してくれて嬉しいです。
私も長男が3歳くらいの時、この子を育てながら医者を続けるのは難しいといわれました。しかし、どこかに預けようとは思えず、仕事を制限することを選びました。そういう
選択ができたことは、恵まれていたのかもしれないけれど、とってもとっても辛いことでもありました。

先週、野のすみれの外来で、36歳のお子さんが当院の運動プログラム←発達障害対応しています、を受けている間にお母さまといろいろお話ししました。36歳、横浜では横浜市総合リハビリテーションセンター創世記でした。重度知的障害の人は地域で暮らすのは無理と言われていた時代から、地域でも過ごせるよ、という過渡期の方。仲間作りをしながら、自宅で子育てをされた方です。それ以前は、良い施設があれば入れた方がいい、入れるしかないと思われていたわけです。
重度知的障害者も社会のピースです。地域でも生きられる、という現在の常識は、その時には常識ではありませんでした。やまゆり園では、施設が障害の重いこどもにとって一番よい終の棲家だと説明をされたのだと思います、入所された親子に、そこは安住の地ではなかった。事件の当初から、この事件は一人の人間が起こしたものではないと感じていました。社会全体の問題です。
お話ししたお母さまも私も、自分たちの子育てが上手くいったとは全く思っていません。親が近くにいたから、かえって良くなかったことも多かった、親が頑張らせずほっぽっとけばよかったとか、大笑いもありました。それでも難しい子育てに挑戦ましたよね、悩みましたよねと終結しました。
たくさんの犠牲があり、たくさんの重度知的障害者の想像を絶する忍耐があり、そのおかげで、また少し社会が動くのかもしれない。長男の子育ての時代に比べると、今の方がよくはなっていると思います。それが、たくさんの重度知的障害者の想像を絶する忍耐の上に成り立つものであることを忘れないようにしたいです。
彼らは弱いと思われるけど、とても強い人たちだと日々尊敬しています。私にはできない忍耐です。
どんとこいみなみの講演会では、私が学生時代から大好きだったケースワーカーさんにお会いしました。もうだいぶ人生の先輩ですが精力的にお仕事なさっていた!医学部3年生にリハビリテーション科と出会い、障害と生きるってことに興味深々な学生だった私ですが、その頃から面識のあった方です。元気をいただきました。当時、まさか、自分が当事者の親になるとは思いませんでしたけど~。
そう、明日は我が身なんですよ。情けは人のためならず。自分が、自分の大切な人が、障害者になったとき、どんな支援者に会いたいのか、そう考えてみていただけたらと思う日々です。

人は隔離されるものでも支配されるものでもない。その人にとって大切なかけがえのない一生です。それを保証することが、ぐるっとまわって自分のためになるはずです。
たくさんのご縁にいつも感謝しています。
記念1
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アートの作業所の職員さんが素敵だった!
2021-11-03 Wed 09:49
ようやく天気も落ち着き気持ちの良い11月スタートの横浜です。

野のすみれの地元の作業所に嘱託医という立場で関わっています。4か所の生活介護型作業所(比較的重度な障害の方が通っています)を運営されているかれんです。
“アート”に関わる作業所です。私も月一回伺うのが楽しみ。黙々とだったりわいわいとだったり、そこもいろいろです。アートをやってるっていうと、障がいはあるけど特別な才能があるひとがやってると思う方もいらっしゃると思いますが、そんなこともありません。(まあ、ある意味、人はみな一人一人“特別な才能”を持っているのではありますが。)
作業所の職員さんも、アートや手作りが好きな人が多いんだと思います。ミシンが上手な方、工作が好きな方、利用者さんの制作のバックアップをされています。
いろんなことをなさっていますが、ファブリック好きの私がいつも胸キュンになるには“織り”。さおり織りってこの業界ではメジャーかと思いますが、さおり織りをすいすい織る方はあんまりいない。職員さんそれぞれの工夫で小さい織りをやっています。昨年の春のコロナ自粛では自宅待機も多く、家での過ごしがみなさん難しかった。その際に、職員さんが段ボールや、空き箱などを使った小さい織り機を作ってみなさん持ち帰りました。そもそも小さい織り機なので、出来上がるものはすごく小さいんですが、それを職員さんのアイデアでブローチになったり、お財布になったり、組み合わせて敷物になったり、愛らしい製品が増えました。
先日、重度知的障害のお嬢さんが、すいすい作業をしているところに遭遇。前作業所はうまくいかず移動して、半年以上かかったようですが、職員さんが張った6本の経糸、これも赤青交互になっていて同じ色をすくえば交互にすくえる工夫あり、に毛糸のとじ針にくくりつけた横糸を上手にくぐらせていました。職員さんと話してみると、この方は経糸が8本になるとわからなくなっちゃうみたいで、6本のうち3本すくってひっくり返してまた3本がいいみたいなんです。リズムですくってるみたいで、と。お~素晴らしい観察眼!3拍子の人なんですね!って感動してお返事すると照れ笑いされていたけど、作業療法士さんのような腕前です!では、と思い、他の利用者さんのことも聴いてみると、この方はぐっと横糸を引っ張りたいみたいなんで縦糸は二本どりにしているとか、障害の重い軽いだけでなく、本人の好み、感覚を大事に作業をカスタマイズされていることがわかり感動。また、縦糸に上手く横糸をくぐらせられなかったり、その日の気分でぐるぐる巻き、これけっこう楽しそう♡ぐるぐる巻きって楽しいですよね!、をしている人にはそのまま。太くなって縄のようになったものもまた美しかったです。
こっちのやり方を教え込むんではなく、それぞれの理解、感覚、好みに合う方法を支援し、出来上がったものを出来上がりの風合いにあわせて製品化する…素敵だなと感じます。
“アート”というそれぞれ違っていい分野だから成立しやすい話なのかもしれません。コロナ禍でアートの存在価値についてまたいろんな意見が出ているけれど、画一でなくていいって部分が人間社会にはとっても必要。整えきってないもの、感性に忠実に作られたものだから愛おしく思えるのだと思う。仕事に行ってるはずなんだけど、学んで、そしてつい製品買っちゃってま~す!(笑)
10月は、かれんの関係から、大倉山の保護猫ちゃんが私の家に来ました♡三歳の甘えん坊です。もうひとつ、心理の世界の勉強のモチベーションのために挑戦した資格試験、公認心理師試験の合格通知が来ました。彩りの少ないコロナ禍生活の中でいちばんいい月だったかな。
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歳々年々人同じからず
2021-02-28 Sun 14:13
2021年の2月も今日で終わり。例年恒例となっている味噌の仕込みをしました。アラサーになった長男はその体格を生かし、豆を踏み潰す?(笑)お役目に精を出してくれました。
コロナで生活が不自由になって1年。日本は厳しいロックダウンがないからなのと、私が医師であるために仕事はさほど大きな変化もなく(職員の絶え間ない感染予防対策のおかげですが)、実はさほどの大きな変動なく過ごしております。
重度知的障害+自閉症というギフテッドな長男との暮らしは、自然と彼が過ごしやすい範囲で過ごすという“制限”がいつもかかっています。
飛行機での旅行は彼が怖がるからいかない、電車を利用しても他人と距離が近い宿は難しいし、かといって高級宿も無理、ごく理解のある数店をのぞいて夜の外食も家族ではしないし、って感じです。だから、へんな言い方になりますが、コロナ以前にそういった活動が自由だった友人たちと、今の方が距離が狭まってるような感じ。正直、皆ができてるのにできないときは、羨ましいなとも思いました。しかし、いったんこの1年を過ごしながら、ニュートラルな気持ちで、自分がどんな生活がしたいか考えてみることができると、我が家の“いけてない”?暮らしぶりは長男のせいではなく、私の好みだったのかもと感じています。世の中の”いけてる”感じにものっていかなきゃという想いもあり、長男を理由に断っていたけど、違うかな、恥ずかしいし、付き合い悪く思われそうですが、家が好き(笑)…
今月はじめに舅が天国に。ばたばたするうちに義妹が、4年前に父が急逝した病院に入院するという騒動(義妹は元気に退院)もありなんだか父の最期も思い出し、2人の父と脳内で会話することが多かった2月になりました。寂しいな。自分の人生も秋に差し掛かったんだと感じます。はじめて好きな人に触れる、はじめての子を抱く、そういう“温かくてうれしいはじめて”は思い出になり、これからは別れが多いのかな…なんておもうと、ぐ~っと寂しさに引き寄せられますが、年の功、心を緩めて自分を甘やかす術も獲得してきた気がします。今、子育て真っただなかの若い世代は、激変する生活の中で、先もみえず、子どもを守りながらどう生きていくかと悩んでいるんだろうな~と思います。先のことが気になって仕方ないと思うけど、今日の細やかなよかった!とか、今日の息抜き~♪を、大切に。特に非定型のお子さんとの暮らしではご苦労が多いと思います。私も何度もお膳ひっくり返しそうになってますが、なんとかひっくり返さずよかった。今は夏なんだ!季節は止まりませんから、激しくても夏を満喫?してください。秋まで来て気がつくこともあるかも。私も長男のせいでの不自由ではなかったのかもとやっと思えました。物言わぬ長男との怪しい?駆け引きにも、のり突っ込みで笑いをとろうとする図々しい50代になりました\(^o^)/
2020以降、お料理インスタをはじめ、家庭菜園も行い、カクテル作りにも手を出し始まました。コロナ後、部屋はどんなに汚くても←これも長男のせいにできる!(笑)単なる掃除嫌いです、、友達呼んで語らいたいと思います。

写真はクリニック近くの彼岸桜。少し早いけど数日前で満開。年々歳々花は相似ていて美しいです。
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障害者用の弊害
2020-11-14 Sat 20:32
コロナのことで右往左往している間にも季節は廻り、2020も最終章にはいった今日この頃。生きづらさを抱えたこどもたちも来年度の進路の決定に悩む時期にもなりました。
私が装具の相談くらいで低頻度にかかわっている少年も来年中学校。先日お目にかかることができました。進学予定の中学校はエレベーターがあるんだけど、通常生徒は使用不可で、車いす移動のその子が使うときだけ使えるようにするにはどうするか検討中で、どんな形で使えるかわからない、とのお返事が来たとか。とっても明るい素敵な少年なので、本人はあんまり気にしてないけど、私がなんか引っかかりました。
“障害者用”って、設定っていつも違和感があります。障害者に使いやすいものは、たいていそうでない人にも使いやすい。みんなで使えばいいんじゃないか。障害者用トイレがみんなのトイレになってよかったと思います。障害は特別なものではないし、あってもなくても一人一人が大切にされるべき。生徒全員に使っていいことにしたら、みんながそのエレベーターに押しかけるでしょうか?そのエレベーターが必要な彼を押しのけてエレベーターを使う生徒がいるんでしょうか?さらに、もしかしたら体調が悪いとか、けがをしているとか、同じようにエレベーターが必要な生徒もいるかもしれない。それを車いすを使っているかどうかだけで分けることはできません。私がその少年だったら、自分が使うときだけ鍵を持った先生がきてエレベーターを動かすなんて嫌です。
まだどうなるかわからない話ですが、来春よい結果になってほしいです。変なことになったら援護射撃?したいと思います。
中学生の思考力を信じたい。先生方の規制ではなく、どのように対処して、どのようなルール作りが必要なのか、自分たちで考えさせてほしいし、考えられるんではないかと思う。それができないなら何のための小学校の教育だったのかと思います。
ただでさえ不確定要素が多い進路の検討…コロナ禍で新しい価値観がうまれ、戸惑う中、必死に対岸に向けて泳ぐ子どもたちに、私たち大人が小さな浮き輪でも投げてあげなくては、そんな風に思う11月です。
うがい手洗い!どうか風邪もひかずこの冬を乗り越えられますように!(写真はコロナ禍中も重度君長男の歯科チェックをしてくださるたまみ歯科。感謝♡)
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最後まで聞いてくれて、わからないがいえる!そんな支援者さん希望です。
2020-10-06 Tue 19:20
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暑さがただただつらかった夏が過ぎ少しホッとします。なんだか甘いものも恋しい季節。お月様からの連想で、うさぎのケーキを作りました。

今日の午後は外来を絞り母業やってまいりました。支援者さんが集うカンファランスに母として出席です。
我が家の長男は重度知的障害+自閉症。話ができないが、字は読みます、空気も読みますという(自閉症業界ではあるあるですが)ひと。彼が何をわかっているのか、彼が何を伝えたいのか、が、わかりにくいタイプです。それなりに意志もやる気も満々、人も大好きゆえ、周囲との軋轢経験も多数です。私はずっと彼のコミュニケーションの特徴を、どうすれば”わかりやすく”支援者さんに伝えらるかを考えてきました。長男を殺すに鉄砲はいりません、知らんぷりされたらもうダメですから~。何とか彼を生かしてやらねばなりません・・・そのための頑張りです。

いまの彼の生活は、グループホーム、作業所、自宅の3つのバランスで成り立っています。母がいつまでそのかじ取り役をするのか?誰かに託せるのか?、長男もアラサーという微妙な年齢になり、母も戸惑いますが、皆さんが活発に議論してくださっている様子に(少し(笑))安心できました。コロナ禍の生活で自宅にもどったり、間引き通所になり、大好きな電車にも乗れないところに、グループホーム入居以来お世話になった当直さん主力メンバーの急逝なども重なり、彼にとっては厳しい春夏だったと思います。周囲の方が、長男とのコミュニケーションの方法を試行錯誤し実践してくれていることに感謝します。
 自分のそういう”重度くん”との経験を生かせるのならと、微力ながら言葉のない人ののコミュニケーションの支援についてお手伝いをできることを外来でももちろん行います。しかし、そういうご相談が増えてくると、困っているのは重度な人ばかりでなく、知的障害が軽度の人でも、一見わかっているようにみえても、言葉だけのやり取りだけではきちんと理解はできていないことが、周囲にわかりにくく、それがトラブルのもとになっていることが多いとわかりました。”わからないことを知られたくない””わからないと恥ずかしくて言えない””わからない自分が嫌”、そういう葛藤がご本人にはあります。周囲が、ほんとうはわからなくて動けないのに”支援への抵抗”ととらえてしまうことが、悲劇の始まりになりがち…。ぜひとも丁寧な観察をしてあげてほしいです。
 
親としてカンファランスに臨んだ後、金木犀の薫りが漂う大倉山公園を長男と歩きながら、支援者さんに望むことって何だろうと考えました。☆伝えたいことを最後まで汲み取ってほしい☆困っていることに気が付いてあげてほしい☆言うことをきくように脅かしたりしないで、先に言うことを聞いてやって信頼関係をつくってほしい・・・この3点に集約されるのかもしれません。あ~、これって、障害のあるなし関係ない。話が聞いてもらえて、わからないことはわかりません!っていうことが、容認される家庭、学校、職場がいいですね。わかるように説明するにはどうしたらいいか、それを考えるのがリーダー…

長男の作業所が会場だったので、スタートは長男も出席しましたが、大好きなガイドヘルパーさんやグループホームの世話人さんなどが一同に会する様子に目をぱちくり。仕事に戻ると意思表示し(笑)戻っていきました。こういうところが可笑しいです♡
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