
リハビリテーション科医として仕事を初めた約20年前、障害者のための住環境整備が先輩医師の尽力で制度化し、所得制限などはありますが、車いすのための段差解消、手すりの設置、リフターなどのリハビリテーション機器の家庭への導入などなどが脚光を浴びました。身体障害をもつ方で、このような住環境整備で日常生活の自立度があがったり、行動範囲が広がったという方もいらっしゃると思います。
では、身体障害からくる制限でなく、知的障害や、発達障害からくる様々な生活上の困ったことについては、どうでしょうか?まだいまのところ、ここの家庭の工夫に任されているところが多いと思います。
我が家でも、自閉症の長男が様々ないわゆる”不適応行動”をもつために、また知的障害としての理解力の問題のためにさまざまな工夫を要してきました。また、私の診ているお子さんのご家庭でも、自傷行動でけがをしないよう部屋をクッション張りにする、さまざまな鍵やフェンスの設置、キッチンの改造(キッチンは危険がいっぱいです。)をしてきた方、また少し別の話になりますが、本人のこだわりのために家族が暮し方を変えた例、本人の感覚過敏(視覚や聴覚)のために住居の考慮をしなければならなかった例などなど多数です。私は自分なりに診療時間内に思いつくノウハウはお話させていただきましたが、今まで仲間は見つけられなかった。ところが先日とうとう巡り合えました♥”発達障害と生活環境を考える会”の末席に加えていただきましたので、これからいろいろ意見交換も重ねていきたいと思います。その方々のお誘いで、初めて”こども環境学会”にも参加してきました。
ハード面だけが大切でないのは言うまでもありません。でもどんな想いでハード を作ったのかは非常に問題です。私は公立の小学校出身ですが、私たちが子供のころの小学校の校舎って味気なく、必要部分は付け足しますよの張りぼて式で、今思うと設計自体に、コンセプトや子ども愛は感じられないし、あの渡り廊下の薄暗さ、変な音響は、感覚に過敏のある子にはさぞや辛かったのではと思います。
お金のかかることだから無理も承知ですが、特に自分では環境に働きかけられない弱さのある子、人には配慮を考えていくべき。そしてそれは今の私たちに即役立つし、誰しも最後は老いていくのですから無駄な投資ではないはずです。
学会の感想は長くなるので割愛ですが、5月を前にさわやかな白金の町でした。ご興味のある方、お声かけください。