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心のたがをはずして川底で光るものに気付きたい
2017-09-08 Fri 23:46
2年前から日本リハビリテーション工学協会の協会誌の編集員を拝命しています。多職種の人が出入りする協会で、投稿の校正などお手伝いしていますが、とても勉強になります。編集委員は回り持ちで、自分の興味のある分野を選び、担当させていただける号があるのですが、私の担当号はただいま原稿が順調に集まり鋭意校正中♪初冬に発刊予定です。またその際にはご紹介させていただきますね!
特集の執筆をお願いした方々といろいろやり取りしました。それも有意義なことでした。
その中で、静岡の重症心身障害児者施設、つばさ静岡の小児科医浅野一恵ドクター、実はまだリアルにはお会いしてないのですが、ご活躍に注目していたドクターに執筆をお願いし何回かメールでやり取りできました。
リハ医を26年やってきて、長男ともうすぐ25年一緒に暮らしてきて、医者になった頃と私の考え方もずいぶん変わったと思います。重い障害のある人々、体を動かすことも、話すこともできない人たちは実は弱くない。ほんとはすごく強い。心のたがをはずして彼ら彼女らと接すると肌からそれが伝わってきます。
この詩は相模原の事件から1年の振り返りに他の沢山の職員さんとともに浅野ドクターがつばさ静岡のHPに寄稿されていた詩です。素晴らしいのでご紹介いたします。
     
川底で光るもの  医師   浅野一恵 
   
幼い頃日が暮れるまで探し求めていたもの
川底で太陽の光に反射して光る小石
用水路のへりにこっそり生える数珠玉
山道で拾ったハート形した紅色の葉っぱ
どれもキラキラ眩しくて、私の心は虜になった
そして今私はつばさ静岡にいる
何気なく過ぎていく日常
障害のない人とある人がともにいる
たまたまこの世で障害を背負っていない君と背負っているあなた
毎朝鏡の前で丁寧に髭を剃る君とさっぱりして誇らしげに微笑むあなた
夜ぐっすり眠れることを願い足浴してくれる君と感謝の気持ちを満面の笑顔で伝えるあなた
心を込めて食べやすい食事を毎日作ってくれる君と美味しそうに頬張るあなた 
苦しそうな息遣いを心配する君と精一杯力を振り絞って深呼吸するあなた
オリンピックの歓声をテレビの前でともに喜ぶ私たち
一緒にプールに入って水鉄砲で無邪気に遊ぶ私たち
一緒にお酒を飲んでともに赤ら顔の私たち
一緒に寝転んでファッション雑誌をともに見入る私たち
何気ない日常を私たちはともに生きている
 
たまたまこの世では障害を背負っているあなた
あなたは私たちに最高の笑顔で応えてくれる
人のやさしさに何よりも敏感なあなたは全身で喜びを表してくれる
痛みや苦しみのセンサーを最小限に絞り、楽しみや喜びのアンテナを最大限に広げるあなたは、くしゃみ一つで大笑いする
私が寂しいことを誰よりも先に気がついて、あなたは頭を摺り寄せてくる
あなたがいてくれて、わたしはホッとする
 
あなたのことを大切に想ってくれるひとがたくさんいる
片道何時間もかけてあなたをお風呂に入れに来てくれるお母さん
肩枕をしてあなたと一緒に眠るのを楽しみに訪れるお父さん
あなたの髪の毛を綺麗に編み込みしてくれるお姉ちゃん
ハウスでとれた苺をお裾分けしてくれる農家のおじさん
ひとりひとりの手を宝物のように大事に磨いてくれるエステのお姉さん
一生懸命練習した成果を発表してくれる吹奏楽部の高校生
美味しいものをいつまでも食べられるように口の隅々まできれいにしてくれる歯医者さん
術後の経過が心配でわざわざ見にきてくれる外科の先生
 
そこには広い心がある
そこには深い思いがある
私のちっぽけさをあらためて知る
けれどちっぽけな私も許されていることを知る
そしてちっぽけな私の中に輝くものを見つけられる力があることに気がつく
ちっぽけな私にも小さな優しい気持ちがあることに気がつく
 
ほんの小さな力かもしれないけれど、精一杯伝えたい
輝き続ける光に気がつかせてくれたことへ、ありがとうの気持ちを
そして伝えたい
たまたま障害を負ったあなたと、障害を負っていない君と、支えてくれる優しい人たちに
大切にしてくれてありがとう
私もあなたが大切です、と
 
川底に光るもの
その一つ一つは小さいけれど
その光は人の心を掴んで離さない
一つ一つの輝きがつながって、大きな川の流れになり
私たちすべてを包む大海の深く広い光になる
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