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アートの作業所の職員さんが素敵だった!
2021-11-03 Wed 09:49
ようやく天気も落ち着き気持ちの良い11月スタートの横浜です。

野のすみれの地元の作業所に嘱託医という立場で関わっています。4か所の生活介護型作業所(比較的重度な障害の方が通っています)を運営されているかれんです。
“アート”に関わる作業所です。私も月一回伺うのが楽しみ。黙々とだったりわいわいとだったり、そこもいろいろです。アートをやってるっていうと、障がいはあるけど特別な才能があるひとがやってると思う方もいらっしゃると思いますが、そんなこともありません。(まあ、ある意味、人はみな一人一人“特別な才能”を持っているのではありますが。)
作業所の職員さんも、アートや手作りが好きな人が多いんだと思います。ミシンが上手な方、工作が好きな方、利用者さんの制作のバックアップをされています。
いろんなことをなさっていますが、ファブリック好きの私がいつも胸キュンになるには“織り”。さおり織りってこの業界ではメジャーかと思いますが、さおり織りをすいすい織る方はあんまりいない。職員さんそれぞれの工夫で小さい織りをやっています。昨年の春のコロナ自粛では自宅待機も多く、家での過ごしがみなさん難しかった。その際に、職員さんが段ボールや、空き箱などを使った小さい織り機を作ってみなさん持ち帰りました。そもそも小さい織り機なので、出来上がるものはすごく小さいんですが、それを職員さんのアイデアでブローチになったり、お財布になったり、組み合わせて敷物になったり、愛らしい製品が増えました。
先日、重度知的障害のお嬢さんが、すいすい作業をしているところに遭遇。前作業所はうまくいかず移動して、半年以上かかったようですが、職員さんが張った6本の経糸、これも赤青交互になっていて同じ色をすくえば交互にすくえる工夫あり、に毛糸のとじ針にくくりつけた横糸を上手にくぐらせていました。職員さんと話してみると、この方は経糸が8本になるとわからなくなっちゃうみたいで、6本のうち3本すくってひっくり返してまた3本がいいみたいなんです。リズムですくってるみたいで、と。お~素晴らしい観察眼!3拍子の人なんですね!って感動してお返事すると照れ笑いされていたけど、作業療法士さんのような腕前です!では、と思い、他の利用者さんのことも聴いてみると、この方はぐっと横糸を引っ張りたいみたいなんで縦糸は二本どりにしているとか、障害の重い軽いだけでなく、本人の好み、感覚を大事に作業をカスタマイズされていることがわかり感動。また、縦糸に上手く横糸をくぐらせられなかったり、その日の気分でぐるぐる巻き、これけっこう楽しそう♡ぐるぐる巻きって楽しいですよね!、をしている人にはそのまま。太くなって縄のようになったものもまた美しかったです。
こっちのやり方を教え込むんではなく、それぞれの理解、感覚、好みに合う方法を支援し、出来上がったものを出来上がりの風合いにあわせて製品化する…素敵だなと感じます。
“アート”というそれぞれ違っていい分野だから成立しやすい話なのかもしれません。コロナ禍でアートの存在価値についてまたいろんな意見が出ているけれど、画一でなくていいって部分が人間社会にはとっても必要。整えきってないもの、感性に忠実に作られたものだから愛おしく思えるのだと思う。仕事に行ってるはずなんだけど、学んで、そしてつい製品買っちゃってま~す!(笑)
10月は、かれんの関係から、大倉山の保護猫ちゃんが私の家に来ました♡三歳の甘えん坊です。もうひとつ、心理の世界の勉強のモチベーションのために挑戦した資格試験、公認心理師試験の合格通知が来ました。彩りの少ないコロナ禍生活の中でいちばんいい月だったかな。
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歳々年々人同じからず
2021-02-28 Sun 14:13
2021年の2月も今日で終わり。例年恒例となっている味噌の仕込みをしました。アラサーになった長男はその体格を生かし、豆を踏み潰す?(笑)お役目に精を出してくれました。
コロナで生活が不自由になって1年。日本は厳しいロックダウンがないからなのと、私が医師であるために仕事はさほど大きな変化もなく(職員の絶え間ない感染予防対策のおかげですが)、実はさほどの大きな変動なく過ごしております。
重度知的障害+自閉症というギフテッドな長男との暮らしは、自然と彼が過ごしやすい範囲で過ごすという“制限”がいつもかかっています。
飛行機での旅行は彼が怖がるからいかない、電車を利用しても他人と距離が近い宿は難しいし、かといって高級宿も無理、ごく理解のある数店をのぞいて夜の外食も家族ではしないし、って感じです。だから、へんな言い方になりますが、コロナ以前にそういった活動が自由だった友人たちと、今の方が距離が狭まってるような感じ。正直、皆ができてるのにできないときは、羨ましいなとも思いました。しかし、いったんこの1年を過ごしながら、ニュートラルな気持ちで、自分がどんな生活がしたいか考えてみることができると、我が家の“いけてない”?暮らしぶりは長男のせいではなく、私の好みだったのかもと感じています。世の中の”いけてる”感じにものっていかなきゃという想いもあり、長男を理由に断っていたけど、違うかな、恥ずかしいし、付き合い悪く思われそうですが、家が好き(笑)…
今月はじめに舅が天国に。ばたばたするうちに義妹が、4年前に父が急逝した病院に入院するという騒動(義妹は元気に退院)もありなんだか父の最期も思い出し、2人の父と脳内で会話することが多かった2月になりました。寂しいな。自分の人生も秋に差し掛かったんだと感じます。はじめて好きな人に触れる、はじめての子を抱く、そういう“温かくてうれしいはじめて”は思い出になり、これからは別れが多いのかな…なんておもうと、ぐ~っと寂しさに引き寄せられますが、年の功、心を緩めて自分を甘やかす術も獲得してきた気がします。今、子育て真っただなかの若い世代は、激変する生活の中で、先もみえず、子どもを守りながらどう生きていくかと悩んでいるんだろうな~と思います。先のことが気になって仕方ないと思うけど、今日の細やかなよかった!とか、今日の息抜き~♪を、大切に。特に非定型のお子さんとの暮らしではご苦労が多いと思います。私も何度もお膳ひっくり返しそうになってますが、なんとかひっくり返さずよかった。今は夏なんだ!季節は止まりませんから、激しくても夏を満喫?してください。秋まで来て気がつくこともあるかも。私も長男のせいでの不自由ではなかったのかもとやっと思えました。物言わぬ長男との怪しい?駆け引きにも、のり突っ込みで笑いをとろうとする図々しい50代になりました\(^o^)/
2020以降、お料理インスタをはじめ、家庭菜園も行い、カクテル作りにも手を出し始まました。コロナ後、部屋はどんなに汚くても←これも長男のせいにできる!(笑)単なる掃除嫌いです、、友達呼んで語らいたいと思います。

写真はクリニック近くの彼岸桜。少し早いけど数日前で満開。年々歳々花は相似ていて美しいです。
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障害者用の弊害
2020-11-14 Sat 20:32
コロナのことで右往左往している間にも季節は廻り、2020も最終章にはいった今日この頃。生きづらさを抱えたこどもたちも来年度の進路の決定に悩む時期にもなりました。
私が装具の相談くらいで低頻度にかかわっている少年も来年中学校。先日お目にかかることができました。進学予定の中学校はエレベーターがあるんだけど、通常生徒は使用不可で、車いす移動のその子が使うときだけ使えるようにするにはどうするか検討中で、どんな形で使えるかわからない、とのお返事が来たとか。とっても明るい素敵な少年なので、本人はあんまり気にしてないけど、私がなんか引っかかりました。
“障害者用”って、設定っていつも違和感があります。障害者に使いやすいものは、たいていそうでない人にも使いやすい。みんなで使えばいいんじゃないか。障害者用トイレがみんなのトイレになってよかったと思います。障害は特別なものではないし、あってもなくても一人一人が大切にされるべき。生徒全員に使っていいことにしたら、みんながそのエレベーターに押しかけるでしょうか?そのエレベーターが必要な彼を押しのけてエレベーターを使う生徒がいるんでしょうか?さらに、もしかしたら体調が悪いとか、けがをしているとか、同じようにエレベーターが必要な生徒もいるかもしれない。それを車いすを使っているかどうかだけで分けることはできません。私がその少年だったら、自分が使うときだけ鍵を持った先生がきてエレベーターを動かすなんて嫌です。
まだどうなるかわからない話ですが、来春よい結果になってほしいです。変なことになったら援護射撃?したいと思います。
中学生の思考力を信じたい。先生方の規制ではなく、どのように対処して、どのようなルール作りが必要なのか、自分たちで考えさせてほしいし、考えられるんではないかと思う。それができないなら何のための小学校の教育だったのかと思います。
ただでさえ不確定要素が多い進路の検討…コロナ禍で新しい価値観がうまれ、戸惑う中、必死に対岸に向けて泳ぐ子どもたちに、私たち大人が小さな浮き輪でも投げてあげなくては、そんな風に思う11月です。
うがい手洗い!どうか風邪もひかずこの冬を乗り越えられますように!(写真はコロナ禍中も重度君長男の歯科チェックをしてくださるたまみ歯科。感謝♡)
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最後まで聞いてくれて、わからないがいえる!そんな支援者さん希望です。
2020-10-06 Tue 19:20
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暑さがただただつらかった夏が過ぎ少しホッとします。なんだか甘いものも恋しい季節。お月様からの連想で、うさぎのケーキを作りました。

今日の午後は外来を絞り母業やってまいりました。支援者さんが集うカンファランスに母として出席です。
我が家の長男は重度知的障害+自閉症。話ができないが、字は読みます、空気も読みますという(自閉症業界ではあるあるですが)ひと。彼が何をわかっているのか、彼が何を伝えたいのか、が、わかりにくいタイプです。それなりに意志もやる気も満々、人も大好きゆえ、周囲との軋轢経験も多数です。私はずっと彼のコミュニケーションの特徴を、どうすれば”わかりやすく”支援者さんに伝えらるかを考えてきました。長男を殺すに鉄砲はいりません、知らんぷりされたらもうダメですから~。何とか彼を生かしてやらねばなりません・・・そのための頑張りです。

いまの彼の生活は、グループホーム、作業所、自宅の3つのバランスで成り立っています。母がいつまでそのかじ取り役をするのか?誰かに託せるのか?、長男もアラサーという微妙な年齢になり、母も戸惑いますが、皆さんが活発に議論してくださっている様子に(少し(笑))安心できました。コロナ禍の生活で自宅にもどったり、間引き通所になり、大好きな電車にも乗れないところに、グループホーム入居以来お世話になった当直さん主力メンバーの急逝なども重なり、彼にとっては厳しい春夏だったと思います。周囲の方が、長男とのコミュニケーションの方法を試行錯誤し実践してくれていることに感謝します。
 自分のそういう”重度くん”との経験を生かせるのならと、微力ながら言葉のない人ののコミュニケーションの支援についてお手伝いをできることを外来でももちろん行います。しかし、そういうご相談が増えてくると、困っているのは重度な人ばかりでなく、知的障害が軽度の人でも、一見わかっているようにみえても、言葉だけのやり取りだけではきちんと理解はできていないことが、周囲にわかりにくく、それがトラブルのもとになっていることが多いとわかりました。”わからないことを知られたくない””わからないと恥ずかしくて言えない””わからない自分が嫌”、そういう葛藤がご本人にはあります。周囲が、ほんとうはわからなくて動けないのに”支援への抵抗”ととらえてしまうことが、悲劇の始まりになりがち…。ぜひとも丁寧な観察をしてあげてほしいです。
 
親としてカンファランスに臨んだ後、金木犀の薫りが漂う大倉山公園を長男と歩きながら、支援者さんに望むことって何だろうと考えました。☆伝えたいことを最後まで汲み取ってほしい☆困っていることに気が付いてあげてほしい☆言うことをきくように脅かしたりしないで、先に言うことを聞いてやって信頼関係をつくってほしい・・・この3点に集約されるのかもしれません。あ~、これって、障害のあるなし関係ない。話が聞いてもらえて、わからないことはわかりません!っていうことが、容認される家庭、学校、職場がいいですね。わかるように説明するにはどうしたらいいか、それを考えるのがリーダー…

長男の作業所が会場だったので、スタートは長男も出席しましたが、大好きなガイドヘルパーさんやグループホームの世話人さんなどが一同に会する様子に目をぱちくり。仕事に戻ると意思表示し(笑)戻っていきました。こういうところが可笑しいです♡
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Tちゃん、ありがとうございました。
2020-07-04 Sat 14:39
てるてる坊主
いろんなことがあり、いろんなことができなくなった2020前半でした。そしてこの状況は今だけではなく、まだ当面続くし、いろんな価値観がかわるすごい局面に、いま自分がいるんだなと身が引き締まる想いです。

我が家のあらさーのじゅうどくん、自閉症+重度知的障害の長男も、同じように変化の中を生きています。今回、スケジュールはめちゃくちゃになるし、3月末からは思いのほか慣れていたグループホームから完全に家に戻っていました。どんな生活になるかなと思ったけれど、意外と淡々と過ごしました。野のすみれの患者さんとお話ししてても、一番混乱が大きかったのは小学校高学年~高校生でしたでしょうか。25歳以上は、やはり年の功!まあ、予定は未定ってかんじが身に染みてるのか、親御さんもびっくりするほど安定が崩れなかった人が多かったです。経験って大事。
5月半ばから、長男もグループホームに戻ることにしましたが、大きな不安がありました。コロナ自粛のあいだに、4年前の入所からずっと物凄くお世話になっていた当直のTちゃん、わたしたちは親しくなってちゃんづけでよんでました、が私より若いのに急逝してしまったのです。コロナとは関係のない急死だったようですが、週1か週2、お目にかかっていたし、亡くなる直前まで普通に接していた私には本当にショックでした。金曜日に長男を迎えに行くと、金曜日のシフトになることが多かったその方から長男を受け取っていましたが、“お母さん、月曜日は寒くなるらしいから上着持たせます”とか、とにかく先のことまで考えてくださり、ありがたかった。乾燥肌で虫刺されも多い長男には、軟膏つけたり絆創膏はったり、そんな手間も多いんですが、いつも私がやるよりずっと綺麗で、母性を感じる方でした。長男もいままで、自分を愛してくれていた人との永遠の別れを何度か経験してきています。ある日会えなくなり、二度と会えないことを彼がどう理解しているかは聞くことが出来ないけれど、私と同じように辛く、私と同じように仕方ないと感じているのでしょうか。いざ、グループホームに戻ると、変わりなく、世話人さん、他の当直の方のフォローも有り、淡々と変わりなく過ごしています。Tちゃんの奥様から香典返しが来ました。新潟のおせんべい。新潟生まれって言ってたな。長男が散らかしても、軽度の子がわがままいっても、うんちおもらししちゃう入居者がいても、ひたすらみんなを可愛がってくれてありがとうございました。そのおせんべいをみて、ほんとにTちゃん亡くなっちゃったって実感して泣きました。
長男のグループホームから、軽度の入居者が多い別のグループホームに移った軽度の知的障害の方がいます。先日、野のすみれに診断書の希望で来院されました。長男の兄貴です。診察の後、Tちゃんの話をしました。”Tちゃんがいなくなって〇さん(長男の名前)が困ると思う、いちばんよく分かってたから”っておっしゃいました。あ~、やっぱりTちゃん、いいひとだったんだなってまた泣きそうになりました。その軽度の方、いろんなことよく見てるんです。“うん、でも残った人のおかげでなんとかやってるよ”って答えると、“うん、じゃよかった”と言って、せっかく近くまで来たからグループホームに遊びに行ってくると、野のすみれを後にされました。“知的障害”って言われる人たち同士、取り巻く支援者との温かい心の交流があり得ることが実感できた瞬間でした。やまゆり事件…私の心から離れませんが、その時も頭に浮かびました。狂人一人の犯罪にしてはいけないと思うんです。犯人は長年施設に勤めていた人だった。その間に施設全体のムードが違えば違ったんではないか、また、犯人は日本の神奈川県で育ちました。世の中が障害者をどう見ているのか。今後どう変わるかが大切です。
長男が温かい支援者の中で過ごせていることが、奇跡でなく,いつでもだれでもそうなりますように。Tちゃん、ほんとにありがとうございました。長生きしてほしかったです!!
コロナ自粛のなか、制約が多い生活で、自分にとって大切なこと、切り捨てていいことがはっきりしました。Tちゃんとの別れを体験して、感謝の気持ちはいつか伝えるって思わず、今すぐ伝えることが必要だということ、知的障害の人同士や支援者さんとの豊かにな気持ちの交流が、実際目の前にもあるってわかりました。悲しいけど、前を向こうって思う!、というか、人は過去には戻れず、前にしか行かれないんだから。
間引き通所中に作業所で長男が作ったてるてる坊主。庭を見ながらぶら下がっています。何もできないけど、それが強みということがある。この子って、このおじさん?が、作ったものはなにか愛おしく捨てずらい母です。
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